2014.09.30
コラム|「外」の視線に学ぶ(鹿児島)
芸術の秋、各地で様々な催しが行われている。演劇も・・・と言いたいところだが、鹿児島では秋の公演は少ない。演劇に適した公立ホールはほとんどなく、しかも大変な倍率の抽選に当たるかどうかは運次第では、なかなかスケジュールを組むこと自体が難しい。勢い倍率の低い夏や春先で公演計画を立てる。あるいは鼻からそのような会場は捨てて、自ら新しい空間を探して街を彷徨うことになる。
次は役者とスタッフ。それぞれの劇団に所属する役者やスタッフの数は限られている。となると、鹿児島の小さな演劇の世界では、客演やスタッフ協力は当然。行ってみると結局同じ役者、同じスタッフの名前が続くことになる。観客も同じだ。それぞれに固定客を持ってはいるが、それ自体ささやかなもので、しかもかなり重なっている。結局小さい空間でこじんまりといわゆる「内輪」で互いに見合うことになる。
そんな中で演劇は育つだろうか。
もちろん、作家は懸命に書き、演出家は懸命に立ち上げ、役者は懸命に舞台に立つ。それは純粋に素晴らしい。しかし、それ自体が目的になっていないか。その先に足を踏み出すきっかけを見つけ出せていないのではないか。必要なのは「外」の視線だ。「外」の視線に曝されたとき、初めて舞台は身構える。改めて自分の立ち姿を考える。自分を知らない人間の存在に怯え、だから必死に伝えようとする。この姿勢がなければ、どんなにすばらしい芽も、成長する前に枯れてしまうだろう。
鹿児島の演劇人はその危機感から「鹿児島演劇協議会」を立ち上げた。「井の中の蛙」が「大海を知」るために手を結んだ。それから早や7年。他所を真似、演劇見本市やリーディング公演で、劇団同士の交流と人材育成、そして観客層の開拓に力を入れてきたつもりだ。県外の公演に参加する劇団も出てきてはいる。しかしまだまだ状況は厳しい。現状に甘んじ、自己満足の芝居作りになっていないか、私たちは自分自身を見つめ直さなくてはならない。
そんな中、2015年秋に鹿児島県で第30回国民文化祭が開催される。鹿児島演劇協議会も「現代劇の祭典」を担うこととなった。企画は①全国のアマチュア劇団の交流 ②鹿児島演劇協議会による新作公演と県民参加企画 ③全国の先進的な優れた舞台の披露の3つ。
アマチュア劇団の交流はすでに全国に参加募集を発信した。全国からどのような劇団が参加してくれるのか楽しみにしている。先進的な舞台公演には青森の渡辺源四郎商店にお願いした。県民参加企画には県外の演出家の力を借りる。いずれも外から鹿児島を見てもらうとともに、私たちも「大海」を知るきっかけになることを期待している。そして協議会として初めての新作公演は鹿児島出身の芹川藍さんに作・演出をお願いした。80年代日本演劇を引っ張った劇団「青い鳥」の中心メンバーであり、今も精力的に演劇活動を続けている芹川さんは、鹿児島の演劇人にとって親の世代。私たちはこの世代の違いという「外」の視線から学んでいきたいと思っている。
そして何より、この国民文化祭が「イベント」として終わるのではなく、鹿児島の演劇の新たな転換点となることを望んでいる。ぜひ、九州の仲間たちにも、その現場に立ち会ってほしいと思う。
最後に、九州の仲間たちへの提案。各県で頑張っている劇団の九州巡回公演ができないだろうか。1年に1団体、各県持ち回りで推薦した劇団が九州各地で公演を打つのだ。旅費宿泊費は各県で折半。そうすれば劇団にとっては同じ作品を九州全体のお客様に見てもらうことができ、観客にとっては地元にいながら九州各県のすぐれた作品を観る機会が生まれる。更に各県の演劇人との交流も深まるだろう。これも「外」の視線に耐えられる作品を産み出すことになるのではないだろうか。
鹿児島演劇協議会理事 丸田真悟