2013.11.28

コラム|新たな一歩を踏み出すとき。―かごしま演劇の歩みと共に―(鹿児島)

役員改選で鹿児島演劇協議会の事務局長となった日から、あっという間に1年半。
ご紹介と共に、今とこれからの鹿児島をしっかりと見つめてみたいと思います。

現在(2013年11月末)鹿児島演劇協議会には「9団体、10個人」が加盟をしています。
中学・高校・大学演劇や、市内外の劇団(南は知覧、北は伊佐)、演劇関連のスクール、個人会員のユニット活動など、その内容は非常にバラエティーに富んだものとなってきました。

IMG_0098

そんな私達の活動の柱となっているのは、年に2つの大きな公演。夏の鹿児島演劇見本市(写真左)と、冬のリーディング公演です。
見本市は今年で5回目を迎え、6団体が30分と限られた時間で上演を行いました。
「鹿児島に根をはり活動を続ける者たちの広く市民にアピール出来る場」として、また「市民が身近に舞台芸術を味わう事の出来る場」として、この企画が少しずつ浸透してきているという事が、来場者数の伸びやアンケートの内容、円滑に行われた企画運営から見てとれるようになってきました。IMG_0098
続いて、冬のリーディング公演(写真右)についてです。こちらは2014年1月25日(土)の開催が3回目となるヒヨッ子企画。毎年、「作・演出」「出演者」「運営」全てが違う形態で、試行錯誤しながら進んでおります。ただ、リーディングという言葉にすら馴染みがなかった鹿児島の演劇人にとっては、新たな挑戦の場として求められるようになってきました。

あ、そうそうもう一つ大事なお知らせが…。しかし、継続しようとすると「マンネリ化」が巨大な壁となって立ちはだかります。
それは今まさに直面しようとしている問題。だからこそ、ここらでしっかり他県に目を向け、足を伸ばし、様々な企画や公演から刺激や情報を得る事が必要となってきました。
そして、それをどう活かすか。新たな面白みを生むタネを作る事が出来るのか。
きっと、ここからが本当の勝負な気がします。
今まで以上に山あり谷ありなのかもしれません。そんな中で、鹿児島の演劇がどうなっていくのかを、どうかぜひその目でお確かめ下さい。
協議会の企画でも、劇団の公演でも何だって構いません。観に足を伸ばしてみて下さい。
新幹線が通った今、南国鹿児島はぐぐっと近くなっていますよ。

あと2年。なんと2015年に「第30回国民文化祭」が、ここ鹿児島で開催されます。
私達、演劇協議会は市の事業の一環で「現代劇の祭典」を行う予定です。
今後、様々な場所でPRする場も増えるかと思いますが、是非、観る側、演る側、どちらでもOKですので興味を持っていただけたら幸いです。
充実した企画になるように、皆で協力し努めてまいりますので、宜しくお願い致します。

鹿児島演劇協議会事務局長 福薗宏美

2013.09.11

第五回九州戯曲賞審査員選評等について

下記の通り、第五回九州戯曲賞審査員選評等を公開します。

第五回九州戯曲賞審査員選評 PDF

第五回九州戯曲賞審査過程  PDF

2013.09.03

コラム|なぜその土地で芝居をするのか?(佐賀)

皆さま、こんにちは。

私は、佐賀演劇連盟のホームページやブログ、Facebook等で佐賀演劇の情報発信をしております、瀬崎智子と申します。今回のコラムでは、なぜその土地で芝居をするのかを大きく「場所」と「人」という2つの観点から考えてみたいと思います。

「なぜその土地で芝居をするのか?」
皆さまも1度は考えたことがあるのではないでしょうか。

「生まれた場所がそこだった」
「ここでしかできない芝居がある」
「たまたま流れ着いた」

いろいろな理由が皆さんそれぞれにあるのだと思いますが、なぜ私が、もしくは佐賀演劇人が佐賀で芝居をするのか?疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。佐賀県は全国からの認知度が低く、九州7県の中でもなかなか名前が出てこないという方も多いと思います。人口も約85万人と全国順位では下から数えた方がはやい位置にあります。正直、役者もスタッフの数も十分とは言えません。
しかし、それでも佐賀で芝居をするのは「場所」と「人」という大きな支えがあるからだと思います。

◆佐賀の「場所」について
もう少し細かく「稽古場所」「公演場所」「交流場所」に分けてみます。
・佐賀で芝居の「稽古場所」といえば、公民館です。佐賀の公民館は無料のところが多いのでとても助かります。無料の駐車場が併設されているのも、ありがたいことです。また、公民館を通してその地域の方々との交流が生まれることもあり、佐賀の演劇人にとって、とても大切な場所となっています。また、佐賀演劇連盟に加盟の「劇団Ziシアター」や「劇団とんとこパピィ」などは自身の稽古場や倉庫を自分達主催の公演ではない時にも、他の団体・個人に提供したりと横の連携があることも佐賀の特徴といえると思います。

IMG_0098・佐賀の「公演場所」はバーや喫茶店から小、中ホールと数は多くはないものの、そのどれもが他県に比べれば安く使用することができます。
例えば、連盟に加盟している「金曜ショー劇場」、通称「金ショー」。今年で15年目になるのですが、その15年間、場所を提供してくださっているのが佐賀市にあるバーでライブスペースでもある「FRONTIER」です。この場所は佐賀の演劇人にとって家、HOMEとも言えるところです。【写真①-2013年8月金ショー 連盟加盟の「斜陽」より 撮影:SEN】
また、連盟加盟の「劇場STAGE MARO」、通称「ステマロ」は、若手の劇団や他県からの劇団公演を行いやすい、手ごろな広さと料金を提供しています。IMG_0098公演だけでなく、稽古や交流会の場にもなっており、深夜まで使用できるというのも大きな魅力といえるでしょう。【写真②-2013年8月 演劇ユニット「のきっぴ!!」より 撮影:SEN】
昨年2012年には、唐津市の町屋カフェ「ぜん」の2Fに「響く乃間」という日本情緒あふれる雰囲気の良い芝居空間もできました。連盟加盟の唐津演劇集団「響」は、そこで芝居だけでなく落語や朗読といった企画も行っています。【写真③-2012年12月 第1回唐津演劇フェスティバルより 撮影:SEN】IMG_0098

・佐賀の「交流場所」といえば先ほどもご紹介した「劇場STAGE MARO」で月の第1水曜日に行われている「佐賀演劇交流会」があります。演劇交流会と名は打っているものの、バンドマンやマジシャン、何もやっていない人もOKの、なんでもありの交流会です。佐賀演劇連盟にくる個人や団体の窓口にもなっていて、他県からも交流に来られます。ブログやFacebookなど多くのSNSが交流の中心になろうとしている中でも、貴重な人と人との生の交流の場となっています。

◆佐賀の「人」について
佐賀演劇は役者やスタッフの数が少ないこともあり、個人や劇団が比較的つながりやすいといえます。そのつながりから衣装や小道具等のモノの貸し借りが行われたり、役者やスタッフの行き来も生まれています。特にスタッフに関しては個人で複数の団体の裏方に関わっていたり、役者の体のメンテナンス的なことをボランティアでしてくれる人もいます。

このようなことからみても、なぜ佐賀で芝居をするのか?という問いに対して、あらためて答えるまでもないような気がしてきます。芝居をするには佐賀は恵まれた地と言えるのかもしれません。しかし、その「場所」も「人」も努力なしには存続し得ないということを認識しなければならないと思うのです。
例えば「公演場所」は、安く提供できるのには理由がいくつもあって、「FRONTIER」はマスターやスタッフの方の芝居への深い理解があってこそですし、劇場は個人的にお金を出して存続させてくださっていたり、ほぼボランティアで管理してくれる人がいるからこそ、その価格で提供できています。「交流場所」としての「佐賀演劇交流会」も、この6年間、個人的に毎月毎月開いているもので、その継続力には頭が下がります。こうした努力と愛のもとに佐賀の芝居は続いてきました。ひとえに佐賀で芝居をしてほしいとの想いからです。
「なぜ佐賀で芝居をするのか?」は「なぜ佐賀で芝居ができるのか?」ということと向き合っていくということでもあるのです。

「なぜその土地で芝居をするか?」は「なぜその土地で芝居ができるのか?」ということ。だからこそ、その地で芝居を継続できるしくみを誰かではなく、一人ひとりが考え行動していかなくてはならないと思います。その土地で芝居ができることは、当たり前ではないのですから。
そして、未来のその地の演劇人たちが「なぜその土地で芝居をするか?」を越え「なぜその土地で芝居をしたいのか?」と考えるような地になるよう『想い』を残していきたいと思うのです。

最後に佐賀演劇の広報を少しだけ。佐賀演劇連盟にはコラムにあげた他にも団体・個人がおります。よろしければ下記アドレスをお暇な時にでも覗いていただけると、嬉しいです。また「佐賀演劇交流会」は、月の第1水曜日に「劇場STAGE MARO」で行われています。佐賀県の方はもちろん、他県の方も大歓迎です。ぜひぜひお越しください。
それでは、まだまだ暑い日が続きますが、皆さまお体ご自愛ください。

●佐賀演劇連盟HP: http://www.stagestage.com/
●佐賀演劇連盟ブログ: http://yaplog.jp/saga_gekiren/
佐賀演劇連盟Facebook
文:佐賀演劇連盟 瀬﨑智子

2013.07.27

九州戯曲賞最終審査結果について(2013/7/27)

7月27日に大野城まどかぴあにて、九州戯曲賞最終審査をおこない、
以下の通りの審査結果となりました。

■最終候補作品(5作品)
福永 郁央  (福岡県福岡市)  『もうひとつある世界の森に巣喰う深海魚たちの凱歌』
佐倉 吹雪  (大分県別府市)  『紺碧。』
高橋 克昌  (福岡県福岡市)  『firefly』
後藤 香  (福岡県福岡市)  『タンバリン』
守田 慎之介  (福岡県行橋市)  『群れる青、トコロ。』

■最終審査員
岩松了、中島かずき、古城十忍、松田正隆、岡田利規

■審査結果
大賞   後藤 香  (福岡県福岡市) 『タンバリン』

最終審査員選評、最終審査審議過程については後日、公式サイトにて公開予定です。

2013.07.01

コラム|あの頃から未来の話(長崎)

昭和が終わる2年前に演劇と出会いました。高校1年の秋の出来事です。ケガしてテニス部にも行かずブラブラしていた僕に、演劇部の副顧問の先生が高校演劇祭のチケットをくれたのがきっかけでした。土日2日間、長崎市公会堂で10数本。演劇に対して全く免疫も無く、ただただ目の前で起こる出来事にのめり込んでいったのです。

その頃、長崎で公演していたプロの劇団といえば劇団四季や東京キッドブラザース。花の都では小劇場ブームが巻き起こり、雑誌や戯曲で見る夢の遊眠社や第三舞台に胸を躍らせていました。長崎市内だけでも相当な劇団数があったと記憶しています。

あれから25年の歳月が流れ、随分長崎の町も変化しました。たくさんの複合施設が建設され、娯楽も大味なものから個々人が楽しめるようなものに変わって行きました。坂の町という住民にとってはひどく大変な地形も、『世界3大夜景』の一つに選ばれた途端、ちょっと誇らしく思えたり・・・。

劇団数もひと頃に比べてかなり減りました。理由はさまざまですが、その一つに稽古場として安価で利用できていた施設の撤退が挙げられます。演劇に限らずいろんなサークル活動の拠点となっていた場所だっただけに、自前の稽古場を持っていない団体は活動を制限せざるを得なくなり、ある期間だけプロジェクトチームを作って上演するユニットや行政主催の舞台への出演に表現の場が変わってきたように感じます。

ただ、広く市民の方々に『演劇』を知って頂く為には、団体による継続的な活動が重要な意味を持つものとも思います。一度減ったものを増やすというのはたやすい事ではありません。そこには必ず人間の輪が必要ですし、立ち上がった団体をサポートしていく体制づくりも必要です。昨年、発足致しました長崎県演劇人協議会(NECO)は、これから活動を考えている団体や個人に対し、応援できるものはしていきたいと考えています。活動実績としましては、ワークショップの開催以外まだまだ大きな動きはありませんが、今年「演劇人サミット」のホスト県という事もあり7月の総会を機に、活発化するものと思います。

子供たちが演劇に興味を持ち、いつか舞台に立つのを夢見る事ができるような環境づくりは、今まさに活動している僕らの責任でもあるのでしょう。地味な作業ですが、少しずつ浸透させていく事から始めよう。そう決意した梅雨の長崎より、白濱でした。

文:白濱隆次(長崎県演劇人協議会 副会長)

2013.04.28

九州戯曲賞、募集要綱を公開いたします(2013)

九州地域演劇協議会では、九州の地域演劇の活性化のため九州戯曲賞の作品を募集します。
詳細は、下記募集要綱をご覧下さい。

九州の劇作家からの応募をお待ちしております。

九州戯曲賞 募集概要

・対象作家
福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県に在住、またはこの7県を主たる活動の場とする劇作家。

・対象作品
2012年の1月から12月までに書き下ろした作品。

・大賞賞金
50万円(佳作、奨励賞等の賞を設置することがあります。)

・応募締切
平成25年5月末日(金)(当日消印可)

・最終審査員
岩松了、中島かずき、古城十忍、松田正隆、岡田利規

主催:九州地域演劇協議会|NPO法人FPAP
共催:公益財団法人大野城まどかぴあ|公益財団法人福岡市文化芸術振興財団|都城市文化振興財団・MAST共同事業体
協力/公益財団法人久留米文化振興会|公益財団法人佐賀市文化振興財団|長崎市|財団法人大村市振興公社|アルカスSASEBO|公益財団法人熊本県立劇場|公益財団法人大分県芸術文化スポーツ振興財団|公益財団法人宮崎県立芸術劇場|一般社団法人日本劇作家協会

協賛:株式会社ふくや
公益社団法人企業メセナ協議会助成認定事業

募集要綱|pdf
応募票 |pdf word

2013.04.24

コラム|熊本、劇団をはじめることと、その在り方

ゼロソー代表河野氏は大学の先輩である。その河野氏と、十数年前に劇団を作った事がある。名を「姉グロ」といった。ゼロソーやら、第七インターチェンジやらが旗揚げする数年前の話だ。別に解散したという事もないが、取り立てて活動したわけでもなく(劇団の会報の様な物を何号か配布しただけ)うやむやになったままだ。方針で揉めたという記憶もない。そもそも方針を話し合った記憶がない。会議自体は何度かやったと思うが、何ひとつ進展しなかった。

当時の我々にとって、劇団を作るということは、大変な勇気を必要とする物だった。「戯曲を書く」とか「演出する」とか「舞台に立つ」ということ自体が、ものすごいハードルの高い事だったとおもう。ワークショップ的な物が熊本で開催されるようになったのは2000年代に入ってからだし、戯曲講座とか、演劇大学のようなイベントもなかった。

IMG_0098転機になったのは、2005年の「日本劇作家大会in熊本」である。熊本の場合だと、劇作家大会以前と以後では、別の地域だと言えるくらい、それをきっかけに状況が一変した。

現在は、毎年なんらかの劇団なりユニットなりが出来ているようだ。当時と比べると、「演劇をしてみる」ことへのハードルは、相当低くなった。2012年10月には、「DENGEKI」という、若手劇団六団体によるコンテストが自主開催された。六団体だ。かつてのペースであれば、20年ぐらいかかっていたはずのものが、1、2年でできてしまうのだから大変だ。

しかしこれが活況だと一口に言えないのが、難しいところだ。熊本で演劇をやっている人の数自体は、全体では横ばいである。昔からある劇団も含めて、かつては一団体15人くらいが平均的な数だったが、今では二桁の人数を抱える劇団はほとんどなくなってしまっており、特に最近出来る劇団は、二人とか三人しかいない場合も多い。

もっともその結果、「劇団の垣根を越えた交流」というものは非常に活発になっている。これまでは、公的な機関のお膳立てのもと一堂に会して、といった形が多かったが、最近は、自分たち独自のネットワークを元に、一から立ち上げるような企画も増えている。かつての劇作家大会のような、大規模なイベントによって一気に何かが変わるようなことは、今後は起こらないかもしれない。しかし、少しずつだが、着実に変化は起きていると思う。

第七インターチェンジ 亀井純太郎

2013.04.16

九州戯曲賞、作品を募集します。(2012年書き下ろし作品対象)

九州戯曲賞への作品を募集します。
募集要綱は、4月中に本サイトにて公開予定です。
九州の劇作家からの応募をお待ちしております。

九州戯曲賞 募集概要

・対象作家
福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県に在住、または主たる活動の場とする劇作家。

・対象作品
2012年1月から12月までに書き下ろされた作品。

・大賞賞金
50万円(佳作、奨励賞等の賞を設置することがあります。)

・応募締切
平成25年5月下旬を予定

2013.02.01

コラム|距離、を思いながら

5年が経ちました。わたしが演劇ディレクターを務める宮崎県立芸術劇場の自主制作公演「演劇・時空の旅シリーズ」、その第1弾、BC411ギリシア『女の平和』が上演されたのは2009年のこと。5年が長いのか、短いのか、それはわかりませんが、とにかく、あれからその旅は、フランス『シラノ・ド・ベルジュラック』、ロシア『三人姉妹』、イギリス『フォルスタッフ/ウィンザーの陽気な女房たち』とつづき、今年はいよいよ、日本に帰ってきました。
ご存じない方もいらっしゃるかと思うので、改めてこの企画の説明を。「劇場を厨房に」ということでスタートしたこの企画は、古今東西の、いわゆる古典作品と呼ばれる戯曲を、九州在住、あるいは九州出身で、現在劇団で活躍されている俳優さんに、一ヶ月宮崎に滞在していただき、わたしの演出で上演するものです。オーディションは行わず、あくまでわたしが各劇団の公演に足を運んだ上で、キャスティングをさせていただいています。
さて、今年もその時期がやってきて、1月上旬から、九州各地の俳優のみなさんがウィークリーマンションに滞在しながら、稽古に励む毎日です。
今年の作品は、故井上ひさしさんの実質的なデビュー作品、1969年(昭和44年)に書かれ、初演された『日本人のへそ』です。
毎年、この企画の稽古中は、わたしたちが九州で演劇をつづけている理由を、日々考えさせられるのですが、今年の作品は、東北で生まれた主人公が東京でのしあがっていく様を劇中劇の形で描いた作品だけに、今まで以上に、「東京」や、わたしたちにとっての九州、そして演劇というものを考えさせられる毎日です。
そして、今まで以上に近い距離。すなわち40数年前の日本で、この作品が生まれたという事実。これまでの作品では、わたしは、その国に行ったこともなければ、もちろんその作品が書かれた時代も知りませんでした。けれど今回は、この国で、わたしが生まれた後に書かれた作品、一度だけですが井上さんともお話をさせていただいたこともあります。
日本人のへそ 「日本」。近すぎて遠い「ニッポン」。あれから何が変わり、そして何が変わっていないのか。そんな距離と格闘しながら、今日も稽古は続いていきます。
とはいえ、井上作品。そこには歌と踊りと笑いがちりばめられ、稽古場は熱気につつまれています。
九州に演劇があること、そのことが意味するもの、そんな一端がここにはあると思います。1月30日の都城市総合文化ホールでのプレビュー公演を経て、2月9日~11日に上演されるこの昨品に、みなさんどうぞ足をお運びください。今年は、5周年を記念した特別編集のパンフレット(無料)もありますよ。
遠いですが、宮崎でお待ちしていますね。

※詳しい公演情報はこちら http://www.miyazaki-ac.jp/?page_id=262
※稽古場ブログもあります。 http://jikunotabi.exblog.jp/

公益財団法人宮崎県立芸術劇場
演劇ディレクター 永山智行

2012.12.31

コラム|福岡にいること、東京にいないこと、アンテナ。

こんにちは。2012年もまもなく終わります
福岡で活動中の劇団、万能グローブ ガラパゴスダイナモスの作・演出、川口です。僕が福岡で演劇を始めたのは、高校卒業後、高校演劇部の知人達で劇団(ガラパとは別の劇団です)を旗揚げした時からですから、もう10年近く前になります。って書いてびっくりしました。もう10年!まさかそんなにも演劇を傍らに置いた生活を続けるだなんて、当時の僕はこれっぽっちも思っていませんでした。

天神の様子

その頃から今現在までをざっくりと振り返ってみるに、福岡の演劇事情に色々な変化があったのだなあと思います。例を挙げだすときりがないのでいくつかピックアップして書きますが、最も大きな違いとして感じるのはやはり、他都市、特に東京の演劇との交流が格段に増えた、という点ではないでしょうか。

演劇に携わる人口が、圧倒的に多い関東地方や関西地方、そこで注目されている劇団やユニット、俳優や演出家が福岡に訪れ、我々福岡の俳優や演出と交流をする。ワークショップであったり、共に作品を作ったり、ドラマドクターという形で創作に深く関わりあったり、こういった密な関係は10年前ではまず考えられなかったことのように思います。

また、直接的な交流はなくとも、インターネットを通じて自分が気になる劇団や演出家、作家の情報は一昔前と比べると遥かに容易に手に入れられるようになりました。継続性のある劇団の大半は、自作をDVD化して販売しておりネットでの購入も容易いです。(一昔前であれば、限られた一部の人気劇団の公演がスカパーなんかで放送されるのを必死に録画していたものです。)また、実際にその作品を見た観客のレビューや、劇団側がyoutubeやユーストリームで作品を配信したりということも、もはや珍しいことではなくなりました。さらにいえば、ブログやツイッター等で、そういった作家や俳優の、創作の根源になっているであろう日々の思考などに触れることもなんら難しい事ではありません。
もはや「気軽に手に入れられる」といったレベルでなく「溢れている」あるいは「氾濫している」といっても差し支えない状況でしょう。(勿論これは、演劇というジャンルに限ったことではないですが。)

僕自身、そういった交流や情報の中で得た知識や技術が、今の自分の演劇活動に多大な影響を与えているのは間違いありません。10年前では、たくさんの時間とお金を使わなければ手に入れられなかったものが、少し手を伸ばせば当時よりも遥かに容易に手に入れられる。凄い時代になったものです。

福岡は国内でも有数の都市であり、その「情報の波」によくもわるくも、とりわけ敏感にならざるを得ない土地だったのだと思います。

しかし、そんな時代だからこそ情報を精査する力がより求められるのだとも感じます。中央から洪水のように押し寄せる大量の情報に、敏感にアンテナをはりつづけることと、そしてその中から何を選り抜き、何を捨てるのか。そのセンスが要求されているのだなと感じることが多々あります。そのセンスが、今一番求められているのかもしれません。

そういえば、東京の知人から「東京にはなんでもある。情報も多い。でも、流れが速すぎて疲れてしまう。」という類いの話をよく聞きます。そういう意味では、このボーダレスな時代、「福岡」という土地のアドバンテージはそこにあるのかもしれません。必要なとこだけ上手にすくいあげて、あとはじっくり腰を据え自分のペースで創作を続ける。そんなオイシイとこどりができれば、一番いいよね、なんと思います。

劇場の話など他にも書きたい事はたくさんありますが、あまり長くなってもアレですのでそろそろここらで。
2013年、福岡の、そして九州の演劇にとって良い年になりますように。

万能グローブ ガラパゴスダイナモス
川口大樹

« Previous | Next »